高裁判決は、いろいろと問題点があったのですが、主に、
①原告の賃金について
地裁が、賃金全額(月47万円)の支払いを命じたのに対し、
高裁では、賞与及び時間外労働分を差し引き、基本給(月27万円)のみの支払いとしたこと
②原告の過失について
原告にも過失があったとして、被告の損害賠償額を8割に減じたこと
の2点を問題点として、上告しました。
①原告の賃金については
判決では、現在原告は働けない状況にあるため、時間外労働も出来ないし、
賞与を得る資格もない、として、
賃金から、賞与及び時間外労働賃金を差し引いた額のみを、
原告が受け取る賃金としました。
原告が現在働けないことは、会社が過重な労働をさせたためであり、
原告は既に労災に認定されています。
過重な労働により労災になった社員の賃金から、
時間外労働賃金と賞与を差し引いた額のみ支払え、という判決は、
明らかに不当判決です。
②原告の過失については、
原告に、以前より生理痛、慢性頭痛等の症状があったこと、及び、
業務を離れて9年を超えて、なお「寛解」(完治)に至らないことを、
原告の鬱病発症の素因因子(なりやすさ)とし、
平成12年12月、13年4月に神経科を受診した事実を産業医や上司に申告しなかったことが、
発症や増悪の防止する機会を失わせる一因となった
として原告側の過失とし、
総額で、原告の過失を2割分とし、被告の賠償額を8割に減じました。
生理痛が鬱病発症の要因になると言う意見など聞いたこともありませんし、
発症以前よりあった頭痛等は、一般的な労働者にありうる程度の症状で、
一審や行政訴訟では、問題にされず、既往歴無しとの判断でした。
精神科の受診の申告については、平成12年12月は、
当時、頭痛や不眠等の症状で、産業医や内科を受診し、精神科も受診してみた程度であり、
一審や行政訴訟では問題とされませんでした。
平成13年4月は、平成12年12月より始まった、
M2ライン立ち上げプロジェクトによる過重な業務により、
発症したとされた時期です。
同時に、時間外超過者健康診断等で産業医の検診を定期的に受けており、
産業医に症状は訴えています。
すでに鬱病を発症した時点で、精神科の受診を告げたところで
原告の鬱病発症は防ぎようもありません。
また、原告は平成13年6月以降、定期的に精神科に通い、
抗うつ薬を飲むようになってからは、会社に通院の事実を告げ、業務の軽減を求めています。
過重な労働を課されて鬱病を発症したこと、
産業医が原告の症状を把握していながら何もせず、鬱病発症につながったこと、
発症後、体調の悪化や通院の事実を会社に申告したのに、
会社の不適切な対応で、原告の症状が増悪し休職に追い込まれたこと、等々を無視し、
「平成12年12月、平成13年4月の発症時の精神科の受診をその時に申告しなかったこと」
のみを問題にして、原告の過失にし、会社の損害賠償支払いを減ずる判決は、
明らかに不当判決です。
賃金、原告側の過失ともに、東芝側の主張を安易に採用しており、
既に原告が労災に認定され、解雇無効の判決が出ることがわかっていた状況では、
経営者に非常に都合が良く、弱い立場の労働者に大変厳しい判決となりました。
過重な労働で労災になった原告の受け取る賃金を不当に減額し、安易に原告の過失を認め、
会社の賃金支払いや、損害賠償支払いを減ずることは
労働者の働く環境を悪化させる判決と言っても過言ではなく、
公平な判決とはとても言い難い内容です。
今後は最高裁で闘っていくことになります。
賃金全額支払いと、会社側の全面的な過失を認めさせる、公正な判決
を勝ち取ることで、会社の責任をより明確にし、
社会のメンタルへルス向上や労働者の環境改善を目指したいと思います。
今後もご支援よろしくお願いします。
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以上、「重光由美さん支える会メールレター31号」より
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