前回のブログで書いた、大阪職業病対策連絡会発行の「労働と健康 第216号」の私の原稿です。
長いのですが、私としては、内容が良いものになっていると思いますので、目を通していただければと思います。
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うつ病の労災認定をもとめてきて 東芝うつ病裁判
原告 重光由美 最初の部分は
東芝との解雇裁判の意見陳述書
http://homepage2.nifty.com/tsbrousai/gyoseiikentinjutu.htmlと同じため省略
途中より
労災申請、そして裁判へ 休職してすぐに会社に労災ではないかと言ったところ、労災申請しないよう説得されました。その後、自ら労災申請について調べたりしていました。2004年3月26日、休職期限切れまであと半年というところで、会社との話し合いを始めました。しかし、会社は労災扱いには出来ないという回答、さらには「9月9日までに復帰しないと解雇になります」と言われました。そこで、日本労働弁護団や過労死弁護団に相談し、個人加入の労働組合に加入、会社と団体交渉をしました。しかし会社は「労災に当たらない、解雇します」の一点張りだったため、2004年9月8日に、労災申請書に会社の証明印のないまま、熊谷労働基準監督署に労災申請をしました。ところがその翌日、交渉も継続しており、次回の話し合いの日程も決まっていたにもかかわらず、9月9日会社から解雇通知が届きました。しかも、解雇通知には、退職の手続きをして欲しいと書いてあり、話し合いを無視した、明らかな嫌がらせでした。当然納得のいかないことから、2004年11月17日に、解雇無効を求める裁判を提訴しました。
その後、2006年1月23日、労基署から「不支給」通知。2006年12月22日、審査請求棄却決定。2007年2月6日再審査請求提出。2007年7月19日、再審査請求申請から3ヵ月経過しても決定がでないことから、「労災不支給取り消し訴訟」を東京地裁に提訴しました。
労災の二度の棄却、そして行政訴訟。うつ病を治療しながらの東芝と国を相手の二つの裁判は本当に負担の大きいものでした。裁判が進む中で、労災の調査書類を目にすることになりましたが、会社の資料は私の業務が軽いものだったと主張したいと思われるものばかり。上司や同僚の証言は会社からの圧力がかかっているとしか思えない内容でした。 また、会社側の証言ばかりを採用して不支給決定した労働基準監督署の調査も全く不当なものばかりでした。
しかし、2008年4月、東芝への解雇撤回の裁判は、地裁で解雇無効および東芝の過失(安全配慮義務違反)を認める全面勝訴判決が出ました。東芝が即日控訴をしたため、現在も控訴審は続いています。そして、今年2009年5月に行政訴訟も勝訴し、判決も確定して労災支給が決定しました。
偏見に負けたくない気持ちが大きな力 私の件はタイムカードが存在し、長時間残業が証明できた事や、多数の業務資料を入手する事ができた事など業務の過重性を証明する事ができたこと、専門家の意見などを聞き、今の労災認定基準でも十分認定されるべき案件だと思っていました。しかし、認定されるまでの期間があまりにも長く、また裁判があまりにも大変だったので、ようやく認められてほっとしている、という気分が強いです。
当初から、絶対に労災認定されると思っていましたので、労働基準監督署の段階で労災が不支給となったときは信じられず、気分の落ち込みはすごいものでした。
資料開示により、不支給理由が東芝が役所に働きかけたとしか思えない内容だったので、役所ではなく、裁判で公正に判定されさえすれば、絶対に労災に認定されると信じていました。嫌がらせをする大企業が勝つのは絶対におかしい。この、絶対に労災と認められるはず、という強い思いが長い裁判闘争中、自分を支えていました。
それとは別に、ブログやホームページで裁判の様子や自分の症状を公開することで、たくさんの人から励まされました。うつ病に対しては、一般の人が無理解・偏見を持つのはもちろん、当初支援してくれた組合関係者の方でさえ、会社の働かせ方に問題があることは理解しながらも、「自分たちは絶対にならない病気」だと思っていると感じていました。それがブログを書き綴りながら支援活動をする中で、周囲から励まされ、「あなたは正しい、頑張って」等といっていただき、周囲の人から「自分の病気に対して理解がされている」と思えることが出来た時、それが症状の回復につながり、「裁判に勝てば、長引いている自分の病気が回復するかもしれない」と思えることができました。それも裁判を続けられた理由の一つです。
有意義に生きていきたい裁判による症状の悪化が酷かったのですが、行政訴訟が勝訴確定し、労災が支給されるようになり、症状が随分と改善してきました。今までのしかかった重圧が一気にとれたようで、随分体調が上昇しています。また、前述したように、裁判を通し、周囲から病気に対する理解を得る事ができると感じることが症状の回復につながりました。
今後は、病気にした原因である会社と向き合い、裁判に勝利する事で、自分の中の「会社への強い恐怖心」が取れ、長引いている病気が回復するのではないかと期待しています。まだ東芝との裁判は続いていますから、最終的に全てが良い形で終われば、かなりの症状が回復するのではないかと思っています。
心の病は大変な病気ですので、まず、病気からの回復や、スムーズな職場復帰が出来る方法を考えて頂きたいです。ですが、うまくいかずに泣き寝入りするよりは、労災申請をするという方法もあることを知っていただきたいと思います。
心の病は今もって社会の偏見が根強くあり、いろいろな事がありますが、最終的には良い経験が出来たと思えるようになって欲しいし、一度きりの人生を、有意義に生きて欲しいです。
公正な判定がなされるような監視を今年、精神障害の労災の判断指針の改定があり、これまでは対象外だった、パワハラ等が労災認定の対象になったと聞きました。対象外だった出来事に労災認定の道が開けた事は良い事だとは思います。しかし、私の場合、現状の判断指針でも十分に労災に認定されるべき事案で、客観的証拠である業務資料が多数あったにもかかわらず、それらは全く無視され、会社側の「たいした業務ではなかった」という言い分のみを一方的に採用され、労働基準監督署、埼玉労働局、労働保険審査会の全てで不支給となりました。そして、司法により、ようやく公正に判定され、4年8か月掛かってようやく労災と認められました。今の労災行政は、私の事例を見る限り、公正に行われているとはいえず、企業寄りであると言わざるを得ません。判断基準が変わっても、公正な適応されなければ、私のように「会社がたいした事が無かったといっている」として、認定されない事案が増えるだけではないでしょうか。病気を持ちながら労災申請、裁判する事は、被災者当人の負担は甚大です。新しい判断基準が、実のあるものとなるよう、労災や労働運動に携わる方には是非、労災行政をしっかり監視し、業務が原因で病気になる人を減らす活動を、今後も頑張っていただき、労働者が働きやすい社会を作っていただきたいとお願いしたいです。
(本文は重光さん本人への聞き取りと裁判資料をもとに編集部でまとめました)
東芝・過労うつ病労災・解雇裁判HP
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