専門的な話になりますが、
労災保険と賃金について、判決文が、社会通念と明らかに矛盾している部分について触れます。
「労政ジャーナル」という経営者向けの雑誌に書かれてある部分を引用します。
http://www.rodo-journal.co.jp/hanrei981.html
№981号 「東芝事件」
(東京高裁 平成23年2月23日 判決)
うつ病による休職期間満了により解雇された労働者が裁判により業務上と認定され、
解雇無効と認めら賃金請求等が認められた事例
休職期間満了による解雇と業務上認定
-略-
さらに判旨は、解雇期間中のXの賃金請求権について、次のように注目すべき判断をしている。すなわち、Xは、業務上の疾病であるうつ病により労務の提供が社会通念上不能になっているといえるから、Xは、民法536条2項本文により、XはY社に対し本件後も賃金請求権を失わない。そして労基法、労災保険法の制度趣旨・目的に照らすと、使用者に帰責事由がある業務上の疾病等による労務提供不能の場合に、労基法、労災保険法によって民法536条2項の適用を排除し、雇用契約の継続を否定し、同条項の適用が排除されるとの解釈をとるべき理由はない。労働者が受領済みの休業補償給付金は、法律上の原因を欠く不当利得であったことが確定するにすぎない、と。しかし、この解釈によれば、使用者が労災保険に強制加入させられている意義が没却されることになろう。
文章が専門的で難しいので、わかり易く書くと、
高裁判決は注目すべき次の判断をしている。
労働者が業務上労災に認定された場合も、労働者には会社に対し、賃金を請求することができる。
労働者が労災保険をもらっていたとしても、会社は労災保険とは別に賃金を全額払わなければならない。
労政ジャーナルの最後の一文
しかし、この解釈によれば、使用者が労災保険に強制加入させられている意義が没却されることになろう。
労災事故が発生した場合、会社が、労災保険を使うことができず、被災者に賃金を全額支払わなくてはならないのであれば、
会社が労災保険に強制加入させられている意義が全くありません。
労災保険の存在意義、会社が保険料を払っている意義を真っ向から否定する判決で、社会通念上明らかなおかしな判決です。
ちなみに、高裁判決文では、私が会社に請求できる賃金は、賞与と時間外を差し引いた額(全賃金の4割)としたため、労災保険(賃金の6割)と賃金の2重請求はできません。
ですが、他の事例に当てはめた場合、被災者が労災保険と賃金の2重請求ができたり、会社が保険金をつかえず支払う額が大きくなったりと、明らかにおかしい運用となります。
この判決が、判例として残ることは、経営者にとっても大きな問題です。
(本来、会社が労災保険を使えず賃金全額支払わなくてはならない事に対して、東芝も上告すべきなのですが、東芝は上告しませんでした。過失や賃金の減額等々、実質東芝の全面勝訴なので、この判決で良し、と判断したのでしょうか)
こんな判決を出し、労務管理の専門誌に判決内容がおかしいと書かれる、
高裁判決が判例として残ることは司法の恥!
だと思います。
(と、最高裁要請で発言済みですが)
一日も早く最高裁が高裁判決を棄却するよう期待したいと思います。
上告して2年半、最高裁本当に結果まだですか(-_-メ)
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